Wealth-X 記事 日本語版(by GOYOH)
GOYOH Business Newsletter : Issue – 2020 July 1st

*当記事は2020年5月29日 のWealth-X の記事、『The Future of Luxury Travel in the Age of COVID-19』をGOYOHが日本語へ翻訳・編集したものです。

旅行業やホスピタリティ業界にとって、COVID-19は歴史的にも最大級の障害となりました。 世界の大都市圏のいくつかは経済が稼働し始め、夏のバケーションシーズンの到来に期待をふくらませている地域もあります。新たなコロナ時代における様々なコミュニケーション手法とともに、ラグジュアリー旅行における短期・長期的な可能性を探ります。

今回は、富裕層を専門とする旅行代理店「スィエナ・チャールズ(Sienna Charles)」の創設者兼CEOのジャクリン-スィエナ・インディア(Jaclyn Sienna India)とWealth-Xによる対談をご紹介します。

コミュニケーション手法の重要性

コロナ危機の早い段階から、多くの旅行代理店は営業活動を中止したものの、中にはコロナが去った後の旅行イメージをふくらませるような告知や、みなさんが旅行に戻ってきてくれるのを楽しみに待っていますといったキャンペーンを続けていた旅行代理店もみられました。

ジャクリン-スィエナ・インディア(Jaclyn Sienna India)は、富裕層旅行者専門とする旅行代理店「スィエナ・チャールズ(Sienna Charles)」の創設者兼CEOです。 最近行った彼女との談話で、先のような「非マーケティング的」マーケティング手法について、このようなアプローチはホスピタリティ業界では多く見られる手法で、これらの情報は富裕層客にとっては既知の内容にすぎないとしています。またジャクリン曰く、「ホテルや航空会社のCEOから400件ものメールが届き、手数料を免除していることを知らせてくれました。ですが、私はそれが顧客を繋ぎとめるとは思っていないのです…今回の危機によってホテルや航空会社がどれだけ多くの損失を被ったかを鑑みれば、顧客を囲い込むために料金や販売戦略を元の状況に戻すでしょう。世の中が通常に戻れば、皆、昔ながらの運営手法に戻ってしまいます。しかしこれは、おもてなしを最優先する人が誰もいないという、業界の落とし穴なのです」。

個別のアプローチを用いたり、クライアント一人一人に会って、ラグジュアリーな旅行の将来への懸念や需要について話すなど、彼女のアプローチは他とは非常に異なって見えます。「顧客はみな忙しい個人なので、チームを上手く稼働させ、気分を盛り上げ、仕事に取り組むために全力をそそがなくてはなりません。富裕層は快適な家を所有し、必要な場所に必要な物をすべて備え、そのようなやり方を望んでいます…このような方々は、いつでも好きな時に旅行に行けるのです 」とインディアは言います。個人富裕層独特のニーズを把握し、旅行の準備が整った時には真っ先に連絡してくれることを理解しているからこそ、多忙な彼らに代わって必要な物事を行う時間と空間を提供したいと彼女は考えています。

富裕層およびウルトラ富裕層の2020年夏旅行

当記事掲載時の情報によれば、ロサンゼルス、ニューヨーク、サンフランシスコといったウルトラ富裕層が多く住む都市は、7月までに自粛要請対象外になる可能性があります。すべての階層の富裕層は再び旅行を検討しており、コロナによる国境閉鎖や、旅行サービスの制限、検疫と安全要件などについて情報を集めています。

早期に旅行を再開するグループ

ミレニアル世代(ジェネレーションY世代)のラグジュアリー消費者は、レクリエーション旅行の早期の第一波となるでしょう。この世代の若者は隔離生活にはうんざりしており、人気の夏の観光地に向かうのを楽しみにしています。 6月中旬から下旬にかけて、第一波のラグジュアリー消費者からソーシャルメディアを通じた旅行に関する投稿が世界で見られるようになるでしょう。

第二波の旅行を再開するグループ 

一方、富裕層とウルトラ富裕層は第二波の旅行再開するグループになるようです。7月末から8月にかけて休暇に繰り出し、新学年前に気持ちをリセットすることで、活力を取り戻すことでしょう。今シーズンにおけるホスピタリティはこれまでとは非常に異なる様相を見せています。レストランやホテルのゼネラルマネージャーと話をすると、自粛解除後は営業を再開するつもりでも、ほとんどのスタッフが離れて家族と一緒に暮らすようになるなど、多くのことが以前と変わってしまったこともあり、再開当初から稼働率を以前の水準に戻すのは難しいでしょう。このような状況を踏まえれば、ウルトラ富裕層にベストなのは、8月と予想しています。

長らく家の近所に留まる事にうんざりしていることもあり、遠く離れた目的地に出発する準備は万端です。富裕層やウルトラ富裕層の家族の多くは、パンデミックによるロックダウン期間を待機するため、セカンドハウスに拠点を移動をしました。ニューヨーカーの場合では、これがロサンゼルスのハンプトンズの自宅であったり、マリブの家に引っ越すという状況です。そのためラグジュアリー旅行者の多くは、家の近くで夏を過ごすという選択肢は避けています。これまでセカンドハウスで充分多くの時間を費やしてきたので、次の旅行は海外の目的地を選ぶでしょう。

「この夏、富裕層とウルトラ富裕層は、ヨット、プライベート機、ヴィラに注目しています。そして、おそらく相当長い期間、誰もが極度の潔癖症になるでしょう。というのも、家族を守る予防手段(セーフガード)として、ヨット、ヴィラ、プライベート機に通常より多くのお金をかけたいと思っているクライアントの様子から、これが大きな変化になる」とインディアは話しています。

パリなどの都市への旅行は、人口の少ない場所への旅行に取って代わると見られています。ボドルム(トルコ)、南フランス、ギリシャなど、コロナウイルスの新規感染者が500例に満たない国や地域が新たな候補となる可能性があります。イタリアはすべての所得層の旅行者によってほとんど避けられていますが、富裕層には、ヨットでシチリア島(パンデミック中の経済は好調)やサルデーニャ(さらに上回って好調)のヴィラに滞在するという選択肢があります。

ウルトラ富裕層に限った傾向として言えることは、休暇の目的地が遠ければ遠いほど尚良いということです。デビッド・カッパーフィールドが所有する20名のゲストのためのバハマ島マッシャ・ケイや、フランス領ポリネシアのザ・ブランド(テティアロア島)、フィジーのラウカラ島など、これらの場所には必要なすべてのサービスを提供しながら、秘匿性を感じるのに十分なほど良い空間が確保されています。しかしながら、インディア曰く「ボラボラ島やフィジー諸島が人気だと思うかもしれませんが、クリスマスまでは人々がアジアに戻るとは思わない可能性があります。」

ラグジュアリー旅行の今後の動向

「ホテルが本来の力を取り戻すまでにはしばらくかかるでしょう。ホテルは世界中で開業が再開されると、食事やサービスのための共通エリアが無い状況から、座席数30%、そして50%へと推移する状況を確認していきたいと思います。 旅の始まりから終わりまで、旅行での体験全てをより快適にし、私たちが最も得意としている領域のヨット、ヴィラ、プライベート機の動向を特に注目しています。」

*オリジナル記事(英語)はこちらからご覧頂けます
https://www.wealthx.com/intelligence-centre/exclusive-content/2020/future-of-luxury-travel-in-the-age-of-covid-19/