ニセコ・リゾートの高級ホテルコンド支える「統合型管理・基幹ソフト」

 


世界のウルトラ富裕層がニセコのコンドミニアムを購入、多くの運営はRoomBossが行なっている

 

RoomBoss(ルーム・ボス)は、リゾート・コンドミニアムやホテルレジデンスなど、区分所有型宿泊施設の管理・運営システムを開発する独立系コンサルティング・ソフトウェア会社である。

豪州出身で、代表取締役のジュリアン・カー氏が北海道ニセコ町で2006年に設立した。豪州でキヤノンをはじめとした大手企業向けのシステム開発を手がけた経歴をもつカー氏は、プライベートなリゾートで北海道・ニセコを訪れるうち、その雄大な自然やパウダースノーに魅せられこの地に移住した人物。2000年代半ばといえば、“ニセコパウダー”が海外のスキー愛好家の間で注目されはじめていた時期である。リゾートホテルやペンションが少しずつ整備開発されていたが、投資資産としてオペレーション管理する仕組みがなく投資運用対象としては不適当であった。

「コンドミニアムのオーナー・投資家が、保有する施設の宿泊予約受付や、外部業者への発注、収入や支払い、借入等の会計管理など業務を統合的に管理できるシステムがなかった。よって自らで開発することにした」と振り返る。

時は移り、現在ニセコは外国人富裕層が集まる高級リゾートエリアに成長、ホテルや高級コンドミニアム、ホテルレジデンス(分譲型ホテル)などが続々と開発・供給されはじめている。そうしたなかRoomBossの管理・運営システムはAYA NISEKO、東急リゾートサービスなどにも導入され、ニセコ地域のホスピタリティ産業の基幹ソフトとして揺るぎない地位を獲得している。

代表取締役のジュリアン・カー氏

 

宿泊施設運営のニーズに全対応
海外旅行会社とのネットワークも

 

同社は「RoomBoss」という名称の統合型管理・運営ソフトを提供している。宿泊客の予約や履歴情報管理はもとより、TrustAccountingといったコンドミニアムオーナーへの会計管理やレポーティングなど宿泊施設運営におよそ必要となる機能を網羅している。

ホテルコンドミニアムを例にとると、まずユニットオーナーがいて、これを管理する運営会社、その下にハウスキーパーなどの清掃・メンテナンス業者がいる。そして運営会社はOTA(オンライン旅行会社)などを通じてエンド宿泊客にリーチしている。

RoomBossではこうした一連のビジネスフローを統合管理できることが最大の強みである。宿泊客がチェックアウトし、売上が確定した時点で、OTAへのエージェントフィーやPMフィー、清掃業者への支払いなどを精算し、オーナーに売上や利益を自動でレポーティングする仕組み。

ホテルコンドミニアムの場合、オーナーの自己利用と運用(外貸し)の振り分けが煩雑といわれるが、ソフトにはAIが内蔵されており、一定の条件のもと、自動で振り分けることができる。旅行会社とのシステム連携にも強みがある。国内外のOTAと接続する物件管理システム(PMS)は珍しくはないが、RoomBossの場合はこれに加えて、米国やカナダ、豪州、シンガポールなどの現地旅行会社のシステムにも接続ができる。現地旅行会社とパイプを構築することで、OTAだけでは手が届かなかった一定以上の富裕層へのアクセスも可能になる。「チェックアウト後は、宿泊客の登録メールあてに自動でアンケートを送付する。その回答をマーケティングや商品開発に活かしていく流れ。オプションでデータ分析サービスも提供している」(カー氏)。


ニセコではパークハイアットやリッツカールトン、アマンなどホテルやコンドミニアムの開発ラッシュ(写真は倶知安町)

 

リフト券や観光バスの予約システムと連携

 

このほかRoomBossを利用するメリットはいくつもある。スキーリフトや観光バスの管理・運営システムをラインナップしており、導入している施設・企業と連携することで、パックツアーの管理・運営を格段に効率化できる。すでにニセコの全てのスキー場や、バスツアー会社の北海道アクセスネットワーク(本社:札幌市)などに導入されている。さらにこれら機能のすべてが、日本語をはじめ英語、中国語、韓国語、フランス語など多言語で利用できる点も見逃せないポイントといえるだろう。ソフトは施設やその管理状況に応じてカスタムメイドで提供される。数ユニット単位から数百ユニットの施設まで幅広く対応でき、他社の既存PMSとの接続にも対応する。RoomBossは、その機能性やシステムの可変性・拡張性が高く評価され、ニセコのほかにも、留寿都、キロロ、野沢温泉、白馬、海外ではサムイ島やプーケット(タイ)、バリ(インドネシア)など多数の国や地域に導入が進んでいる。

 

日本全国の高級リゾートにも展開
インバウンド富裕層へ価値提供

 

先ごろは富裕層オーナーの増加を受けて、グローバル富裕層向けにラグジュアリー、ホスピタリティ・サービスを提供する「GOYOH」と提携するなど、付加価値となるサービスメニューを充実させている。GOYOHとの取り組みにより、ホテル運営会社だけでなく、ホテルコンドミニアムのオーナーにとっても収益性、管理、ライフスタイルサービスといった面でさらなる魅力を提供可能となる。RoomBossとGOYOHは今後、沖縄、箱根、京都、長野、北海道、といった国内ラグジュアリーリゾートでのさらなるサービス展開を進めていく。ホテルやコンドミニアムの管理・運営システムとして、あるいは観光資源の連携による地域活性化の基幹システムとしてさらに支持を集めていきそうだ。

 

※※当コンテンツは、月間プロパティマネジメント誌2019年12月号に掲載された記事を編集して掲載したものです。オリジナル記事PDFは以下リンクよりご覧いただけます。

PM2019年12月号記事(ROOMBOSS)