Wealth-X 記事 日本語版(by GOYOH)

新型コロナウイルス時代におけるラグジュアリー不動産市場のトレンド

新型コロナウイルスの影響は、ラグジュアリー不動産市場や富裕層やウルトラ富裕層を対象顧客とする不動産企業などを含む、世界中でほぼ全ての業界に及んでいます。この状況下でのラグジュアリー不動産業界のトレンドとして、デジタルツールや設備、顧客対面時の安全手順、with/afterコロナでの住宅の役割の変容、といったものが挙げられます。

LEVERAGING TECH AND DIGITAL ASSETS
テクノロジーとデジタル設備の活用

Wealth-Xが行った直近の談話の中での、ニューヨークの高級不動産仲介会社Compass社のチーフ・エバンジェリストのレオナルド・ スタインバーグ氏による富裕層向けデジタルマーケティング資料に関する見解では、「デジタル資料における動画には注意が必要だと思います。今日、高級ブランドやマーケティング業界において、画像などのイメージ管理が及ばない事は大きなリスクを負います。なぜなら、私たちは自身の所有物を販売しているのではなく、お客様が所有者となる物件を販売しているのです。今後は、高品質の画像のみを使用することは非常に重要な点です。」と話しています。

パンデミック前の世界では、ラグジュアリー不動産の販売におけるデジタルツールは、主に各当事者の時間やリソースを考慮し設計されたオプショナルかつ贅沢なツールと見なされていました。 しかし、今日においてバーチャルな販促ツールは最も重要です。Compass社のようなデジタルに精通した先進的な設備を持つ不動産販売会社は、混乱を来すことなく営業を継続でき、自宅で仕事をしながら世界中に点在する物件をリモートで案内することができました。スタインバーグ氏は、テクノロジーに焦点を当てた不動産事業者の特徴として、絶妙な画像やうっとりするようなビデオ動画、分かりやすい平面図、3Dツール(インタラクティブマップやバーチャルツアー)を駆使できる能力と設備を持っている点を指摘しています。Compass社は、不動産仲介業者にむけて、このような迅速な方向転換をすべく新しいテクノロジーを導入するための啓蒙を行ったものの、一部の不動産仲介業者にとっては、このような変化への対応は困難なプロセスとなりました。

まさしく、テクノロジーツールやデジタル設備はwithコロナ時代におけるラグジュアリー不動産の販促活動に変革をもたらしています。 不動産エージェントは、顧客の物件内覧の予約前に電話やオンライン会議を設定して物件を下調べし、さらに事前に顧客からの質問への回答を用意します。 この方法により、これまで物件内覧の際に必要とされた多くの時間を短縮し、さらに新型コロナウイルスへの感染リスクを大幅に低減します。

THE NEW NORMAL: MID-PANDEMIC SHOWINGS
新たなスタンダード:withコロナにおける物件内覧

かつてコロナウィルスの流行の大きな影響を受けていた地域でもビジネス活動は再開し、withコロナにおける物件内覧は大きく様変わりしています。 例として、ニューヨーク市の厳格な手続きを見てみると、不動産内覧への慎重な再開には、物件入出前には署名が必要で、他の訪問者との偶然接触するリスクを排除するために完全予約制にすることが義務付けられています。予約時間に到着すると、不動産仲介者と購入者はフェイスマスクを着用しさらに6フィート(約180㎝)離れた距離を保ち、物件内の壁などの表面との接触を避けることが求められています。そして双方とも、靴を脱いで、ブーツを履く必要があります(これはとりわけ新しい習慣ではありません)。また、もし物件内の表面に偶然触れた場合、不動産仲介者は物件を出る前に消毒をする必要があります。不動産仲介者と購入者だけが、物件への立ち入りが許可され、物件所有者やテナントは現場から離れていなければなりません。

これらの手続きは厳しいものかもしれませんが、法律を遵守し、購入者の安全な環境を確保しながら最高レベルのサービスを維持することが成功への道と言えるでしょう。「私は2時間前に物件内覧に行ったばかりですが、購入者が緊張しているのが分かりました。『彼女はすべての防疫手順を正しく行っているか?』 『彼女はちゃんと靴を脱いだか?』と点検しました。 そして私は消毒剤を持参していましたが、手指の消毒を新しい経験の一つとして彼女と楽しく実践しました。不動産仲介者、所有者、業界関係者が安全を最優先事項としていることを理解し、彼女は内覧をはじめることができたので、とても安心しました」とスタインバーグ氏は話しています。

NEW LUXURY HOME TRENDS
新たなラグジュアリー住宅のトレンドとは

半年も経たぬうちに、新型コロナウイルスはラグジュアリー住宅のトレンドにまで大きな影響を与えるようになりました。 それは一言でいうと、アメニティ設備やスペースに対しての共有/専有の傾向が逆転しているというものです。 顧客はより広い空間 – 家の中でも距離を保てるような、広いスペースを好みます。コロナ禍において隔離や所定場所での避難を余儀なくされたケースも発生したことで、スイミングプールや屋外スペースの需要は急増しました。「特に上位ハイエンド市場において、そして価格への反映からうかがえるもの、それは共有のフィットネスジムや共有のスイミングプールなどに行く必要がなく、このような施設・設備を自らの専有スペースの中に完全に揃った状態を作りたいという強い要望です。映画を見に行くかと言われれば、「いいね」と答えるものの、自宅に居ながら素晴らしい劇場体験が出来ることを望んでいるのです。 これまで共有化されてきたこれらのアメニティ設備の多くは、少なくとも当面は、再び専有化が好まれる傾向に進む可能性が高いのではないかと私は見ています」と スタインバーグは説明しています。

在宅勤務への移行は、テレビ会議に新たに対応する人のためのラグジュアリー住宅の変化にも拍車をかけました。「PCの設置場所が必要なだけでなく、電話会議やズーム会議を行うためのプライベートで静かな場所が必要であるという新しい認識が生まれたと思っています。騒々しい環境でテレビ会議を行うのは、あまりプロフェッショナルとは言えないからですから…(自宅でテレワークをする人は)新型コロナウイルスによるロックダウンを言い訳にするともできますが、その後はプロ意識を復活させなければならないので、そのためのスペースが重要になると考えています」。

様々な在宅設備やスペースの増加傾向はしばらく続くと思われますが、その他のコロナ禍に生み出されたトレンドは早々に廃れていくでしょう。2011年9月11日以降の住宅購入の傾向を例に見てみると、「9月11日以降、誰も4階以上の物件を購入しなくなった時期がありました。しかしそれもかなり急速に変化し、3-12ヶ月後には違った状況になるとの見方をしていたのです。」とスタインバーグ氏は話しています。

COVID-19 LUXURY REAL ESTATE OUTLOOK
新型コロナウイルス時代におけるラグジュアリー不動産市場の展望

不動産における継続的な成功の鍵は、顧客の不安を和らげることです。不動産仲介者や業者がすべきことは、顧客が新しいコロナウイルスの恐怖から守られているという安心感を感じられるように、あらゆる手続きや安全基準を遵守する必要があります。 技術革新から衛生状態の改善に至るまで、このような破壊的状況からであっても、多くのメリットを得ることができるのです。

「新型コロナウイルスは非常に痛ましく、非常にコストのかかる悲惨で悲劇的な出来事だったと思います。しかし私たちは常に、このような危機的状況からも、信じられないほどの機会や私たちの生活における改善が生まれることを忘れないでください」

IT改革は大きなものになると思いますが、多くのことが改善され、貴重な環境への意識をもたらすようになると思います。これからはより良い世界になるかもしれません。そしてそこで起こり得ることに私は非常に明るい見通しを持っています」とスタインバーグ氏は述べています。

 

*当記事は2020年7月23日 のWealth-X の記事、『COVID-19 Luxury Real Estate Outlook』をGOYOHが日本語へ翻訳・編集したものです
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