Wealth-X 記事 日本語版(by GOYOH)

*当記事は2020年4月8日 のWealth-X の記事、『COVID-19’s Impact on the Wealthy: Best Practices for Engagement During a Global Crisis』をGOYOHが日本語へ翻訳・編集したものです。

データに基づく適切な顧客や支援者へのアプローチが、富裕層向けビジネスにおいてコロナウイルスの流行という困難を乗り切る鍵となる

by マヤ・インバーグ : Wealth-X Thought Leadership & Analytics 部門 シニアディレクター

現在も進行を続けるコロナウイルスは、甚大な犠牲者をもたらしました。そして世界経済の広範が麻痺するにつれ、深刻な景気後退はますます広がることとなりました。 実際、このパンデミックは私たち一人ひとりに何らかの形で、富裕層にも例外なく、多少なりとも影響を与えています。

健康と経済への懸念

自身や家族の健康に対する懸念は別として、富裕層の大多数が起業または事業の運営を行っているか、あるいは上場企業の株式を相当数保有をしています。 昨今の景気低迷において、いくつかのセクターで需要が急増する一方、富裕層の多くが自身のビジネスに対する甚大なる打撃に向き合おうとしています。先進国の政府や中央銀行は、企業や市民が事業を継続できるための十分な財政力を有していますが、新興国と開発途上国の政府は、先進国と同等のセーフティネットを提供するのに苦労するでしょう。

誰もがそうであるように、上位富裕層*(VHNW)やウルトラ富裕層**(UHNW)もかなりの経済的影響を受けています。コロナによる経済的低迷が具体的にどのように影響するかは、富裕層の資産配分状況に依って異なります。このような層の大多数は、未上場企業や上場企業(ホールディングス)の両方の株式に大きな資産割合を持っています。
世界中の多くの企業が苦戦し、世界中の株式市場が低迷しているなか、 多くの層が財産の減少を目の当たりにしており、また、現地通貨で流動資産(現金など)を保有している層は、この資産が米ドルに対して大幅に弱まるの状況となっています。これは、米国の富裕層あるいは米ドルで貯蓄を抱えている層にとってはかすかな明るい兆しです。とはいったものの、個人資産の行く末は、政府と保健当局がパンデミックへの対応にどのように対処するか、そして最悪の事態を脱した時の景気回復の様相に大きく依存します。

富裕層顧客:情報に基づいた関係構築が鍵

ではこのような困難な時期に、富裕層をターゲットとして要望に応える企業ができることとは一体何でしょうか? 非営利団体、教育、金融サービス、ラグジュアリーサービスといた分野にコロナウイルスがどのような影響を与えているかについて、富裕層見込み客、クライアント、支援者との良好な連携を実践する上でのベストプラクティスを考えてみます。

金融系サービスは困難な時期にこそ関係を強化
パンデミックの発生以降、株式市場は急落し、富裕層の投資に影響を与えています。金融機関の場合、クライアントのポートフォリオに問題が発生る可能性が高く、一部の富裕層からは資産運用の担当者へ質問がおよぶこともあると思われます。
どのような取組みをするべきか?

  • クライアントの懸念事項について積極的に話し合いましょう。個人の投資の資産価値が暴落し、また事業でも苦戦を強いられている場合、富裕層顧客にとっては感情的にも試練の時です。 彼らは損切のために株式を売却したいと思うかもしれませんが、金融市場への信頼を擁護し、直近の大不況の時の事例を交えて話し合うことが重要です。
  • 必要とされるときにサポートを提供することは、クライアントとの関係を強化する絶好の機会にもなります。

ラグジュアリーブランドは、最上級顧客に集中すべき
大小様々ある高級サービス・商品は、先行きの見えない状況や実店舗の閉鎖で苦境に立たされています。 この環境で購入する可能性が高いのは、サービスや製品を充分に熟知しており、その道に通じている人々(顧客)です。
どのような取組みをするべきか?

  • ロイヤルカスタマーの特定に集中し、独自の手法で積極的に顧客との接触をもつようにします。「あな たのブランドを評価し、短期的に何をすべきか、このパンデミックの局面が終わったら何をすべきかを理解する機会ととらえることが重要です。 一流のクライアントとの関係を強化し、時間をかけて高級サービス・商品の購入動向を掴むことより、彼らについてもっと理解するよう努力してください。」とビアンキ氏は述べています。
  • 教育機関と同様、孤独な日々が続く中、富裕層はインスピレーションを得ようと未来に目を向けます。 休暇の計画、不動産投資、ヨットやプライベート機など主要な資産をアップグレードしているかもしれません。 このような試練の時に企業が顧客に購買促進のインセンティブを提供しているとしたら、それよりも、富裕層の既存資産、興味、情熱を傾けている事を理解することの方が、売上を伸ばすことができます。

 

NGOにおいて、大口支援者は危機に瀕する
今後の行き先が不透明な中、非営利団体における資金調達は深刻な影響を受けており、多くの支援者らは、本格的な取組みを再開をするには、景気後退が過ぎ去るまでじっと待つという選択をしています。Wealth-Xのマネージングディレクター兼グローバルセールスヘッドのマニュエル・ビアンキは、「それでもなお、理念や目標に真剣に取り組む大口支援者らは、財政面での支援を続けるでしょう。現在の需要レベルの高まりを鑑みると、新規支援者は従来の慈善活動の範囲外での支援ににも取り組む能性も生まれる」とコメントしています。
どのような取組みをするべきか?

  • 大口支援者との個人的な繋がりやコミュニケーションは常に最も重要です。自身の組織の使命を再度伝え、最近の取り組みとその重要性についてアピールします。大口支援者が何に関心を持っているのかを理解していること、そしてそれに基づいた情報をアップデートしていることを伝えることが重要となります。
  • この危機の間、多くの富裕層が様々な慈善的な取り組み方法を模索しているかもしれません。 目的を達成するにあたり、現在利害関係を持つ人を把握し、大口支援者と関わりの深い人物を調査し、それに沿った個別の戦略を立案することにより、大きな可能性を生み出せます。

教育機関は、コミュニティサポートを強化し将来を見据えるべき
感染が終息するまでは、富裕層は教育機関への寄付を延期または保留を望むかもしれません。ただし、このパンデミックに関して何らかの援助ができる支援機会があれば、寄付に対して積極的になる人が多くなる可能性もあります。
どのような取組みをするべきか?

  • 現在の支援者や新規見込み支援者へのアプローチにおいて、あなたの教育機関において大きく求められている専門分野、重要性のある学術的英知を紹介する機会持って下さい。 科学、法律、またはビジネスの専門家の立場からは、この危機に関連する専門性についてチームスタッフが貢献できる能力を紹介してください。
  • ほぼ全世界でロックダウンが続く中、多くの人が明るい時代を目指しています。 学生が遠隔で学習ができるようにするために教育機関が行っている作業や採用した教職員についてアピールし、来る新学期とキャンパスライフに意気揚々と戻れるためのプランを立案します。

 

長期的な収穫を目指して
今後数週間また数か月間は、個人あるいは事業的な立場の全てにおいて困難が予想されます。しかし、この状況は永遠に続くものではありません。コロナウイルスの蔓延が終わりに近づけば、経済には活気が戻り、富裕層からの活動への確信が高まり、真摯に取組みを実践した企業には長期的な利益がもたらされるでしょう。

*オリジナル記事(英語)はこちらからご覧頂けます
https://www.wealthx.com/intelligence-centre/exclusive-content/2020/covid-19s-impact-on-the-wealthy/