英・ロンドン|都市型
テン・トリニティ・スクエア
T e n T r i n i t y S q u a r e

伊藤夜風[アスタリスク]
グローバル不動産 リサーチング・スペシャリスト

 


テン・トリニティ・スクエアの外観。歴史的建築物、世界に2つとない場と空間・サービスへの世界共通認識がホテルレジデンスの価値となっている

 

テン・トリニ ティ・ ス ク エ ア(TENTRINITY SQUARE )は1922年 に建てられた、英保険仲介会社「ウィリス」(WILLIS)の元本社ビル。建物外観はそのままに用途・機能を転換、超高級ホテルレジデンスとして2016年に生まれ変わった。開発主体はレインウッド(Reignwood)インベストメントUKで、運営はホテルとレジデンスともにフォーシーズンズ(Four Seasons at Ten  Trinity Square)である。レインウッド・インベストメントUKは中国系複合企業レインウッド・グループの傘下で、本件が初めての英国不動産投資である。

 

施設

地上8階建てで、建築家エドウィン・クーパーの手によるボザール様式の建物。内装デザインをネオ・クラシック調に統一、歴史ある建造物としての付加価値をさらに高めている。ホテル部分は1~4階(100室)、レジデンス部分は4~8階(41戸)。住戸の販売価格帯は約8億から約25億円で、坪当たり平均価格は約2,000万円ということになる。なお居住者は、プライベートクラブ「The Club」とホテル内設備・付帯機能の使用とかかるサービスの利用が可能となっている。

プライベートクラブは、クラブルーム、シガーラウンジ、バー、アートギャラリーのほか、ワインルームならびにワインセラーを備えている。一方、ホテルは客室、レストラン、バーはもとより、サロン、フィットネスクラブ、スパを完備する。フォーシーズンズによるホテルとしての基本サービスと、各種オプショナルサービスがすべて提供される格好だ。
そのほか居住者は、以下のサービスが利用できる。

▶ 基本サービス
ドアマン、コンシェルジュ、ポーター、ストレージ、ホテル施設

▶ 居住者向けオプショナルサービス
ハウスキーピング、室内クリーニング、ランドリー、バレットサービス、食料品・雑貨保管、リムジン、ショッピング

 

 

ロンドン塔に隣接。文化と歴史、経済が交わる特別性、唯一無二性を引き出す室内空間

 

周辺環境

建物自体が「Grade II」に指定される歴史的建造物であり、世界遺産の「ロンドン塔」に隣接。また、金融ビジネスの中心であるシティに近接するなど、文化、歴史、経済が交わる特別性が際立った場所にある。ロンドンと聞いて多くの外国人がまず真っ先にイメージする、代表的な景色と建造物が集約されている。

徒 歩 圏 内 に14世 紀 か ら 続 く「Leadenhall Market」な ど の 商 業施設が集積している。西側には「セント・ポール大聖堂」や17世紀のロンドン「大火記念塔」などの歴史・ 文化施設がひしめき合っている。また、南側にはロンドン塔、その向こうには「タワーブリッジ」と「テムズ川」。その対岸に「テート・ モダン」、「ロンドン市庁舎」が望め、さらに斬新なデザインでロンドンの新しいランドマークとなった「シャード」が広がっている。

 

ラグジュアリーレジデンス 事業化のポイント

歴史、地位、唯一無二性、その成り立ちから、大きな話題性を持っている。1922年に当時のイギリス首相によりロンドン港務庁の本部ビルとして建築、46年には第1回国連総会の会場およびレセプション会場となり、直近までは英国Willis保険のロンドン本部ビルとして使用されていた。

立地自体は、ロンドンの中心地として2000年の歴史を持つ場所であり、英国の歴史的建造物(Grade II)に認定される文化的価値の高さ、かつ視認性がある。2012年には映画007シリーズ「Skyfall」の撮影の舞台となるなど話題性も充分だ。こうした唯一無二のブランド・ステータス性を持ち、さらにラグジュアリーホテルのサービスと融合、大きくその価値を昇華させている。これらから生み出される、「特別なラグジュアリーライフスタイル」は世界のスーパーリッチたちを惹きつけている。

価格は周辺の高級住宅相場とも連動しない、全くの別マーケットが形成されている。取り扱う事業者にも特別性が
要求される。

▶ブランド力

「オペレーター」と「建築デザイン」の2つの要素が挙げられる。世界的な高評価が定着する「フォーシーズンズホテル」がオペレーションを担うことで、「格別な高級感とブランドイメージを備えた、世界トップクラスのラグジュアリーなライフスタイル」であることを居住者に印象づけている。また設計・デザインには、著名建築家エドウィン・クーパーの手によるエレガントなボザール様式が採用されており、施設全体にスタイリッシュで高級な空間が作り上げられている。

▶価格帯 (ローカル市場相場に対して)

これら独自のコンセプトやサービスは大きな付加価値となり、最終的に販売価格に転嫁されている。Ten Trinity Squareの販売価格は坪当たり約1,750万円からになっているが、住宅価格が世界で有数の高さとなっているロンドンの住宅市場のなかでも大きなプレミアムがついている。

参考までに、現地の不動産会社のHalifaxのレポートを参照すると、ロンドンの一般的な住宅相場では、一番高額と言われるチェルシーケンジントンエリアの相場で1坪当たり524万円。また、クリスティーズの直近のレポートによると、ロンドンのラグジュアリー住宅相場は、平均1坪当たり800万円となっている。

▶販売会社とその選択

販売会社やマーケティングにおいても、以上の特別なコンセプトや付加価値を活かすことのできる販売会社を通じて販売することが必要不可欠だ。またブランドイメージのコントロールの観点からも、グローバルな超富裕層に相対でアクセスできる販売会社を通じて販売している。日本では「アスタリスク」がマーケティングおよび販売を担当し、英国国内では「クリスティーズ」が販売およびマーケティングを行っている。

 

※本掲載記事は2017年月間プロパティマネジメント掲載記事からの転用です。

本編はこちらからご覧いただけます
PM2017年2_4月号記事(世界の超高級ホテルレジデンス)第1回