日本進出意欲ある3ホテル事業参入の要件と特色

 

日本を有望視するホテル事業者の顔ぶれ

 

日本を有望市場とみて進出に関心を寄せる海外ホテル事業者は多い。本稿は、ホテルコンセプトとグローバル戦略が明確で、日本への関心度の高い3事業者を紹介しよう。
「COMO」は健康をコンセプトとしたラグジュアリーなライフスタイルホテルで欧州の富裕層を中心に知名度が高い。
「Artyzen(アルティザン)」の親会社はカジノ王のスタンレー・ホー氏が創業した香港のコングロマリット企業信徳(シュンタック)集団で、中華圏向けの芸術・エンターテインメント・ライフスタイル事業に精通している。
「NOBU」は欧米圏で日本食ブランドとして知られ、日本でもレストラン展開しているのでご存知の読者も多いだろう。3事業者とも欧米、中国など海外で特定富裕層から支持され、近年グローバルでのホテル展開をはじめた。

 

MC契約が前提 地域特性が要件

 

ホテルのコンセプトや主要客層が異なる各社の共通点は、運営契約でMC(マネジメント・コントラクト)を前提としている点。理由は事業者の会計・財務基準によるもので、それに沿わない契約は事業構造的に不可能というわけだ。したがって、日本の慣習に合わせ賃貸契約とするのはハードルが高いかも知れない。
ホテル業態における日本参入の条件は、ブランドコンセプトの核となる関連施設(レストランやスパなど)を併設することで、部屋数についてはラグジュアリーで50室~100室、ハイエンドで200~300室が目安。もっとも客室の条件は、ブランドのグレードで変動するためこの限りではない。その他の施設要件は特にない。デベロッパーや案件内容に合わせる柔軟性を備えている。機会を幅広に見ているということだろう。
近年、ホテル会社がこぞって打ち出している特長・傾向に「独自の体験」がある。3社ともグローバル展開では、独自のコンセプトと地元のコンセプトを融合させた商品づくりを念頭に置いている。

 

国内向け商品の変換で外国人向けコンテンツに

 

アスタリスクの意見として、日本は地域的な特色や付加価値となりそうなモノを多く備えている。具体的には、食や精神性、歴史、地元独自の産業、芸能、文化であり、ここまでディスティネーションたり得るコンテンツが数多い国は世界中でも日本以外に存在しない。惜しむらくは、そうした多くが国内旅行者向けで、インバウンド旅行者の視点に基づいた商品設計がなされていない点である。
インバウンド客の誘致を次のレベルへ進めるためのステップは、ローカルなコンテンツをインバウンド向けや特定のライフスタイル層向けに変換し、海外の旅行者がサービスや品質に信頼を寄せるホテル事業者やブランドを通じてアクセスを提供することではないだろうか。
その意味で、今回紹介する3ホテル運営会社の日本への関心度合いや取り組み、海外市場でのブランド展開は、日本での今後のホテル開発コンセプトにおいて大いに参考になるものと思われる。

 

コモホテルズアンドリゾーツが運営するホテル

COMO Uma カングー(インドネシア) – 外観

COMO Metropolitan バンコク(タイ) – 到着ロビー

COMO The Treasury パース(オーストラリア) – ロビー

 

アルティザンホスピタリティグループが運営するホテル

Artyzen Habitat 北京東直門(中国)- 外観

Artyzen Habitat 北京東直門(中国) – Townsquare Cafe

Artyzen Habitat 北京東直門(中国) – 客室

Artyzen Habitat 北京東直門(中国) – Townsquare Cafe

 

 

ノブホテルズが運営するホテル

Nobu マニラ(フィリピン) – 外観

Nobu Shoreditch(英国) – ロビー : Will Pryce撮影

Nobu Shoreditch(英国) – レストラン : Will Pryce撮影

 

※※当コンテンツは、月間プロパティマネジメント誌2018年8月号に掲載された記事を編集して掲載したものです。オリジナル記事PDFは以下リンクよりご覧いただけます。

PM2018年8月号記事(日本進出意欲3ホテル)